参考:コウモリと狂犬病

Q:家の外で弱っているコウモリを見つけたらどうしたらいいですか?
A:人や動物がコウモリと物理的に接触することがないようにしなければなりません.弱っているということは健康でない可能性が強いコウモリです.シャベルで注意しながらすくって,ペットや人が近づけないような場所に移して置いておきましょう.しかし,もし動物や人がその弱ったコウモリと接触してしまったときは,動物管理局の係官が狂犬病検査のためにそのコウモリを引き取りにくるまで触らないようにして捕獲しておきます.

Q:人が狂犬病にかからないようにコウモリの退治をした方がいいでしょうか?
A:それはダメです.コウモリはほとんどの州で保護動物となっていて,種類によっては州や連邦政府によって絶滅の危機にある動物種に指定されています.コウモリは有益な哺乳類であり,1匹のコウモリは一晩に何千匹もの昆虫を食べるといわれています.もし建物の中にコウモリの集団が住みついているのを見つけたときは,州の自然保護局と相談してコウモリが入れないような建物の構造を助言してもらうのが最善でしょう.

Q:室内飼育のペットに狂犬病ワクチンを接種したほうかいいでしょうか?
A:家の中で飼っていても動物は外へ逃げ出すことがありますし,逆に外から野生動物が家の中に入り込む可能性もあります.こうしたことから,室内飼育であっても犬,猫,フェレットなどのペットには狂犬病ワクチンを接種しておくことをお奨めします.

Q:いつもコウモリを使って仕事をしている人が狂犬病にかからないようにするためにどういう予防措置をとることができますか?
A:予防接種実施諮問委員会(Immunization Practices Advisory Committee)ではハイリスクの人には暴露前予防接種を行うように勧告を出しています.この中には職業がら狂犬病に感染している可能性のある動物と頻繁に接触する人も含まれています[10].こうしたハイリスクの職業にはコウモリを扱う人も含まれるものと思います.暴露前予防接種は初回接種(0日)以降7日目と21日目(または28日目)の3回の接種からなります.この一連のワクチン接種によって,気がつかないうちに狂犬病に暴露した場合でも一定の防御免疫が賦与されます.狂犬病ワクチン接種済みの人であっても,もし狂犬病に暴露された場合には暴露後治療を受ける必要があります.この場合,接種は0日と3日目の2回,筋肉内接種を行うのみです.コウモリを用いて仕事を行う人は革製の作業手袋などの防護服をつけて,咬まれないようにするべきでしょう.もし咬まれた場合には,そのコウモリが狂犬病陰性とはっきりするまで,狂犬病暴露後治療を行わなければなりません.

Q:コウモリ狂犬病の感染はどうしたら防げますか?
A:人とコウモリが接触しないようにするべきです.もしコウモリと接触した場合には医師の診察を受け,狂犬病暴露後治療の必要があるかどうか判断しなければなりません.ペットがコウモリと暴露した場合には獣医師の診察を受けさせます.ペットは州や地域の法律に従ってワクチン接種をしておかなければなりません.
(米国獣医師会雑誌,Journal of American Veterinary Medical Association, November 1, 1998, Vol. 213, No. 9から)

[ 目次に戻る ]